この記事では、毎週分配金が出る米国ETF「YSPY」について、2026年10月時点の最新データで仕組み・分配金・新NISAでの扱い・メリットとデメリットを解説します。元の記事を書いた2025年12月から、1回あたりの分配金は約6分の1に減っています。「利回り30〜50%」という数字だけを見て判断しないよう、最新の数字で見直していきます。
この記事の結論
- YSPYは、S&P500の3倍レバレッジETF(SPXL)のプットオプションを売って得たお金を、毎週分配するETF。資産のほとんどは米国の短期国債と現金
- ヘッジ目的以外でオプションを使うため、新NISAの成長投資枠では買えないと考えたほうがよい(取り扱いや新NISAの対象かどうかは証券会社で確認を)
- 仕組みとリスクを理解したうえで、資産のごく一部で「毎週の分配金」を試してみたい経験者向け
- 直近1年の利回りは約37%だが、今の分配金(週約0.03ドル)で年換算すると約10%。月1万円の分配金を得るには約730株(約167万円)が目安
YSPYとは何か?
YSPY(GraniteShares YieldBOOST SPY ETF)は、アメリカの資産運用会社であるグラナイトシェアーズ(GraniteShares)社が2025年2月26日に設定したアクティブ運用のETF(上場投資信託)です。ナスダックに上場しており、純資産は約729万ドル(stockanalysis.com、2026年10月時点)と、ETFとしてはかなり小さな規模です。
YSPYが提供する投資機会とは?
YSPYの一番の目的は、オプション取引で得た収入を毎週の分配金として受け取れることです。運用会社は「S&P500のオプションを売って得られる収入の3倍」を目指すとしており、そのためにS&P500の日々の値動きの3倍に連動するレバレッジETFのオプションを売っています。2つ目の目的として、そのレバレッジETFの値動き(上昇には上限あり)にも連動することを目指しています。
プットオプション売りの仕組みをかんたんに
YSPYの中身は、ふつうの高配当ETFとはまったく違います。2026年10月27日時点の保有資産は、次のようになっています。
- 米国の短期国債と現金:資産のほぼすべて。オプションを売るときの担保(保証金)の役割です
- SPXLのプットオプション(売り):満期が数日〜1か月程度の短いもの。比率としてはごくわずかですが、損益を大きく左右するのはこの部分です
プットオプションの売りとは、「決められた価格(行使価格)でSPXLを買い取る約束」を他の投資家に売り、その対価として「プレミアム(オプション料)」を受け取る取引です。SPXLが行使価格より上にあればプレミアムがそのまま収入になり、これが分配金の原資になります。逆にSPXLが行使価格を大きく下回ると、その下落分をYSPYがかぶることになります。
SPXLはS&P500の日々の値動きの3倍を目指すETFなので、S&P500が1日に3%下がればSPXLは約9%下がります。値動きが大きい分プレミアムも高くなりますが、相場が急落したときの損失も大きくなりやすい、という仕組みです。運用会社は、損失を抑えるために「プットスプレッド(安い価格のプットを買って下落に備える方法)」を使うことがあり、その場合は収入が減るとしています。
新NISAには使えるのか?
結論から言うと、YSPYは新NISAの成長投資枠では買えないと考えたほうがよいです。つみたて投資枠も対象外です。
新NISAの成長投資枠には金融庁が定めた商品の基準があり、次のような商品は対象から外されています。
- 毎月分配型の商品
- ヘッジ目的以外でデリバティブ取引を使う商品
- 信託期間が20年未満の商品(投資信託の場合)
YSPYは収入を得ることそのものを目的にオプション(デリバティブ)を売っているので、2つ目の条件に当たると考えられます。同じようにオプションを使うJEPIやXYLDも成長投資枠の対象外です。なお、松井証券が2025年6月に出した新規取り扱いのお知らせでは、YSPYの「新NISA成長投資枠」の欄に対象の印は付いていませんでした。ただし、ほかの証券会社が「NISA対象外」と明記したページは確認できなかったため、購入前にお使いの証券会社で必ず確認してください。
特定口座での取引は、楽天証券(2026年2月の公式ページでYSPYを掲載)と松井証券(2025年6月に取り扱い開始)での取り扱いが公式ページで確認できました。そのほかの証券会社での取り扱いや、今も取引できるかどうかは証券会社で確認してください。
では、一般枠(特定口座)でも買いなのか?
私は、資産の中心に据える商品ではないと思います。理由は3つあります。1つ目は、分配金が大きく減っていることです。2025年10月には週0.19ドル前後だった分配金が、2026年10月には週0.03ドル前後まで下がっています。2つ目は、株価が元記事のころ(20ドル前後)から約15ドルまで下がっており、分配金の多くが「元本の払い戻し」と推計されていた時期もあることです。3つ目は、純資産が約729万ドルと小さく、運用が続くかどうかにも注意が必要なことです。
一方で、運用会社の公表では、基準価額ベースの直近1年のトータルリターン(分配金込み)は15.39%(2026年6月30日時点)と、プラスで推移した時期もあります。特定口座で持つ場合は分配金のたびに米国で10%、国内で20.315%の税金がかかることも踏まえ、仕組みを理解したうえで少額で試す、という使い方なら検討の余地はあると私は考えています。
なお、私自身は現時点ではYSPYを保有していません。
YSPYの詳細情報(2026年10月時点)
YSPYの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 銘柄コード | YSPY |
| 正式名称 | GraniteShares YieldBOOST SPY ETF |
| 運用会社 | GraniteShares(グラナイトシェアーズ) |
| 設定日 | 2025年2月26日 |
| 上場取引所 | ナスダック |
| 運用方法 | アクティブ運用(S&P500の3倍レバレッジETFのプットオプション売り) |
| 株価 | 15.20ドル(2026年10月29日終値) |
| 純資産 | 約729万ドル(stockanalysis.com、2026年10月時点) |
| 経費率 | 1.15%(運用会社が費用を負担し、2026年12月31日まで1.15%を上限とする契約。本来の総経費率は5.88%) |
| 分配頻度 | 毎週(目標。分配は保証されていません) |
| 新NISA成長投資枠 | 対象外と考えられる(証券会社で確認) |
YSPYの配当利回り・権利落ち日
YSPYの直近12か月(52週)の分配金は合計約5.67ドルで、2026年10月29日の株価で割ると利回りは約37%になります。ただし、この数字には分配金が多かった時期が含まれています。直近4週の平均(週約0.029ドル)で年換算すると、利回りは約10%です。運用会社のファクトシート(2026年7月22日版)でも、分配率(直近の分配金を年換算した値)は12.23%(2026年7月17日時点)となっています。
| 権利落ち日 | 支払日 | 1株あたりの分配金 |
|---|---|---|
| 2026年10月23日 | 2026年10月27日 | 0.02939ドル |
| 2026年10月16日 | 2026年10月20日 | 0.02823ドル |
| 2026年10月9日 | 2026年10月14日 | 0.02992ドル |
| 2026年10月2日 | 2026年10月6日 | 0.02965ドル |
| 2026年9月25日 | 2026年9月29日 | 0.02846ドル |
| 2026年9月18日 | 2026年9月22日 | 0.02960ドル |
| 2026年9月11日 | 2026年9月15日 | 0.02952ドル |
| 2026年9月4日 | 2026年9月9日 | 0.02833ドル |
分配金の水準は、この1年で次のように変わってきました(1回あたり・権利落ち日ベース)。
| 時期 | 1回あたりの分配金 |
|---|---|
| 2025年10月 | 0.186〜0.196ドル |
| 2026年1月 | 0.167〜0.179ドル |
| 2026年4月〜5月15日 | 0.141〜0.149ドル |
| 2026年5月下旬〜7月上旬 | 0.051〜0.074ドル |
| 2026年7月中旬〜8月 | 0.028〜0.035ドル |
| 2026年9月〜10月 | 0.028〜0.030ドル |
※分配金の出典はstockanalysis.com。米国株は権利落ち日の前営業日までに保有している必要があります。2026年5月以降に分配金が大きく減った理由について、運用会社の説明は確認できませんでした(2026年6月30日時点の年次報告書では「重要な変更はなかった」とされています)。また、運用会社の通知では、2026年4月28日支払いの分配金(0.14119ドル)は96.16%が元本の払い戻し(米国の会計基準による推計)とされていました。
YSPYの経費率
YSPYの経費率は1.15%です。100万円分を1年持つと、約1万1,500円のコストがかかります。運用会社のファクトシート(2026年7月22日時点)では、運用報酬0.99%、本来の総経費率は5.88%で、運用会社が費用を負担して1.15%に抑えています。この上限は2026年12月31日までの契約なので、2027年以降の経費率も確認が必要です。
投資対象とポートフォリオ
YSPYの保有資産の中身
YSPYは株式を直接持っていません。保有資産は、短期国債・現金と、SPXLのプットオプションだけです。2026年10月27日時点の内訳は次のとおりです。
| 保有資産 | 比率 |
|---|---|
| 米ドル(現金) | 56.03% |
| 米国短期国債(2027年2月満期) | 22.98% |
| 現金同等物 | 21.31% |
| 米国短期国債(2027年4月満期) | 6.32% |
| SPXLのプットオプション(4本、10月28日・30日満期) | 合計 約-0.13% |
| 現金(未決済分など) | -6.53% |
※stockanalysis.comの公表値(2026年10月27日時点)。オプションは満期が数日と短く、毎週のように入れ替わります。比率が小さく見えても、S&P500が急落したときにはこの部分の損失が大きくなる点に注意してください。
YSPYのメリット3選
- 毎週分配金を受け取れる:年52回、毎週のように分配金が入るため、受け取りのリズムが細かく、キャッシュフローを実感しやすいのが特徴です。
- 資産の大部分が短期国債と現金:担保は米国の短期国債と現金で持たれているので、株式を直接持つETFとは違い、ふだんの値動きは比較的小さくなっています(2026年10月中旬〜下旬の株価は15.0〜15.2ドル程度で推移)。
- 相場が荒れたときにプレミアムが高くなりやすい:プットオプションの価格は、相場の変動が大きいときほど高くなります。カバードコール型(JEPIやXYLD)とは違う形でオプション収入を狙える商品です。
YSPYのデメリット3選
- 分配金が大きく減り、急落時の損失も大きい:1回あたりの分配金は2025年10月の約0.19ドルから、2026年10月には約0.03ドルまで減りました。さらに3倍レバレッジETFのプットを売っているため、S&P500が急落するとSPXLが大きく下がり、その損失をYSPYがかぶります。上昇局面でも利益には上限があります。
- コストが高く、費用上限の期限もある:経費率は1.15%と、SPYD(0.07%)の16倍以上です。しかも運用会社が費用を負担しているからこその1.15%で、その約束は2026年12月31日までです。
- 新NISAで買えず、規模も小さい:オプションを使うため成長投資枠の対象外と考えられ、特定口座では分配金のたびに米国10%・国内20.315%の税金がかかります。純資産も約729万ドルと小さく、売買のしやすさや運用継続のリスクがあります。米ドル建てなので為替の影響も受けます。
YSPYと似たETFとの違い
同じ「S&P500に関係する高利回りETF」でも、収入の得方によってリスクや新NISAでの扱いが変わります。主なETFと比べると、次のとおりです。
※利回りは直近12か月の分配金÷株価。YSPY・SPYDは2026年10月29日、XYLDは2026年10月29日、JEPI・JEPQは2026年10月23日時点の値です。新NISAの扱いは証券会社によって異なる場合があるので、購入前に確認してください。
今の分配金で比べると、YSPYの利回りはXYLDやJEPQと大きく変わらない水準まで下がっています。そのうえでコストとリスクはYSPYのほうが高いので、毎月の分配金が目的ならJEPIやJEPQ、新NISAで高配当を狙うならSPYDやSCHD(投資信託版)を先に検討するのが自然だと私は思います。
YSPYはどんな人に向いている?
向いている人
- オプション取引やレバレッジETFの仕組みを理解している投資経験者
- 毎週の分配金という仕組みを、資産のごく一部で試してみたい人
- 分配金の減少や元本の目減りが起きても受け入れられる人
向いていない人
- 新NISAの枠で高配当ETFを買いたい人
- 長期で資産を増やしたい人、元本を減らしたくない人
- 「利回り30〜50%」が続くと期待している人
まとめ
YSPYを分配金で毎週1株買うには何株必要?
YSPYの株価は約15.2ドルです(2026年10月29日終値15.20ドル)。直近4週の分配金の平均は1回あたり約0.029ドルです。新NISAでは買えないと考えられるので特定口座で計算すると、米国10%・国内20.315%の税金を引いた手取りは、1株あたり週に約0.021ドルになります。
15.20ドル ÷ 0.021ドル = 約720株。つまり、約720株あれば毎週の分配金で1株ずつ買い増せる計算です(外国税額控除は考慮していません)。
月1万円の分配金を得るには何株必要?
1ドル=150円で計算すると、月1万円は約67ドルです。1か月を約4.33週とすると、1株あたりの手取りは月に約0.091ドルなので、約730株、金額にして約1万1,100ドル(約167万円)が目安になります。元記事(2025年12月)では約130〜140株としていましたが、分配金が減ったため、今は5倍以上の株数が必要です。分配金は毎週変わり、これからも大きく増減する可能性があるので、あくまで目安として考えてください。
最後に
米国のETF「YSPY」の特徴や投資のメリット・デメリット、その独自の投資戦略や新NISAでの扱いを、2026年10月時点の最新データで解説しました。
YSPYは、3倍レバレッジETFのプットオプションを売ることで毎週分配金を出す、非常にユニークな商品です。ただし、設定から1年あまりで分配金の水準は大きく下がり、「利回り30〜50%」は過去の数字になりつつあります。高い経費率、急落時の損失、規模の小ささなど、多くのリスクを理解したうえで判断する必要があります。
YSPYは伝統的な長期投資向けのETFではなく、リスクを理解し許容できる経験者が、ポートフォリオのごく一部で使う商品と言えるでしょう。これから高配当ETFを始める方は、まずSPYDやSCHDのような伝統的な高配当ETFから検討することをおすすめします(筆者の意見です)。
※本記事のデータは2026年10月30日に調べた時点のものです(株価は2026年10月29日、保有資産は10月27日時点。出典:GraniteShares(ファクトシート・年次報告書・19(a)通知)、stockanalysis.com、楽天証券、松井証券ほか)。新NISAでの取り扱いは各証券会社でご確認ください。投資の判断はご自身の責任で行ってください。

