この記事では、AI関連株×カバードコール戦略で高い分配金を出す米国ETF「AIPI」について、2026年10月時点の最新データで特徴・分配金・新NISAでの扱い・メリットとデメリットを解説します。設定から2年以上がたったので、株価や分配金が実際にどう動いてきたかも確認しました。
この記事の結論
- AIPIはAI関連株に投資しながらカバードコール戦略をとり、年35%前後の分配利回りで毎週分配金を出す超高利回りETF
- 新NISA(成長投資枠・つみたて投資枠)では買えないと考えられる。分配が頻繁で、オプション(デリバティブ)を収益目的で使っているため
- 分配金の推定100%が元本払戻金で、株価は設定時の約50.7ドルから約35.2ドルへ約30%下落。分配金も2024年より約30%減っている
- 分配金で毎月1株ずつ買い増すには約46株、月1万円の分配金を得るには約87株が目安(いずれも現在の分配金が続いた場合)
AIPIとは何か?
AIPI(REX AI Equity Premium Income ETF)は、アメリカの資産運用会社REX Shares(レックス・シェアーズ)が2024年6月4日に設定したアクティブ運用のETF(上場投資信託)で、NASDAQに上場しています。人工知能(AI)関連企業への投資とカバードコール戦略を組み合わせて、AI関連株の値上がり益と高いインカム(分配金)の両方を狙う商品です。純資産は約4億7,400万ドル(2026年10月22日時点)です。
AIPIが提供する投資機会とは?
AIPIは、BITA AI Leaders Select Indexの構成銘柄から選んだAIのリーダー企業に投資します。最大の特徴は、成長が期待されるAI関連企業への投資と収入源となるオプションプレミアムを組み合わせた点です。半導体、データセンター向けのストレージ、AIソフトウェア、クラウドなど、AIを支える企業群に分散投資しつつ、保有株のコールオプションを売って得たプレミアムを分配金の原資にしています。
カバードコール戦略をかんたんに言うと
「株を持ったまま、その株を一定の価格で買える権利(コールオプション)を他の人に売り、その代金(プレミアム)を受け取る」という戦略です。AIPIは、予想変動率(インプライド・ボラティリティ)が高い個別銘柄について、現在の株価より少し上の価格のコールオプションを売っています。AI関連株は値動きが激しいぶんプレミアムも高くなりやすく、これがJEPIなどより分配金がはるかに多い理由です。その代わり、株価が大きく上がった時の値上がり益は一部しか受け取れません。
新NISAには使えるのか?
結論から言うと、AIPIは新NISAの成長投資枠でも、つみたて投資枠でも投資できないと考えられます。
新NISAの成長投資枠には金融庁が定めた商品の基準があります。AIPIは2026年5月から毎週分配(毎月分配よりさらに頻繁)になっており、運用でもオプション(デリバティブ)を収益目的で使っているため、対象外となる次の条件に当てはまると考えられます。
- 毎月分配型の商品
- ヘッジ目的以外でデリバティブ取引を使う商品
なお、AIPIは2024年設定の新しいETFで、国内での取り扱いの有無は証券会社によって異なる可能性があります。購入を考えている方は、利用している証券会社の外国ETFの取り扱い一覧で「AIPI」があるか、NISAの対象かどうかを確認してください。
では、一般枠(特定口座)でも買いなのか?
資産を大きく増やしたいという方には、AIPIは向いていないと私は思います。理由は2つあります。1つは、分配のたびに米国で10%、日本で20.315%の税金がかかり、複利の効果が小さくなること。もう1つは、AIPIの分配金は運用会社の推定で100%が元本払戻金(ROC)とされており、実際に株価も設定時から約30%下がっていることです。「年35%」の分配金は、そのまま「年35%増える」という意味ではありません。
一方で、分配金を含めたトータルで見ると、2026年6月末時点の直近1年の成績はプラスです(詳しくは後述)。「元本の目減りはある程度受け入れて、AI関連株の値動きに乗りながら毎週の現金収入を得たい」という方にとっては、選択肢の一つになると思います。私なら、資産の大部分をAIPIにするのではなく、高配当枠の一部にとどめます。
AIPIの詳細情報(2026年10月時点)
AIPIの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 銘柄コード | AIPI |
| 運用会社 | REX Shares(REX Advisers, LLC) |
| 設定日 | 2024年6月4日 |
| 上場取引所 | NASDAQ |
| 株価 | 35.22ドル(2026年10月23日終値) |
| NAV(基準価額) | 35.02ドル(2026年10月22日) |
| 純資産 | 約4億7,400万ドル |
| 保有銘柄数 | 89銘柄 |
| 経費率 | 0.65% |
| 分配頻度 | 毎週(2026年5月までは毎月) |
| 運用戦略 | アクティブ運用+カバードコール戦略 |
AIPIの配当利回り・権利落ち日
運用会社が公表している分配利回りは34.79%(2026年10月20日時点)です。直近12か月に支払われた分配金は合計13.43ドルで、10月23日の株価で割ると利回りは約38.1%になります。直近12か月の利回りのほうが高いのは、この1年で株価が下がったためです。
2026年5月から、分配は毎月から毎週に変わりました。運用会社は「頻度の変更であり、分配率の変更ではない」と説明しています。直近の1回あたりの分配金は0.23〜0.26ドルほどです。
| 権利落ち日 | 支払日 | 1株あたりの分配金 |
|---|---|---|
| 2026年10月21日 | 2026年10月22日 | 0.2396ドル |
| 2026年10月14日 | 2026年10月15日 | 0.2510ドル |
| 2026年10月7日 | 2026年10月8日 | 0.2535ドル |
| 2026年9月30日 | 2026年10月1日 | 0.2501ドル |
| 2026年9月23日 | 2026年9月24日 | 0.2518ドル |
| 2026年9月16日 | 2026年9月17日 | 0.2448ドル |
| 2026年9月9日 | 2026年9月10日 | 0.2486ドル |
| 2026年9月2日 | 2026年9月3日 | 0.2507ドル |
| 2026年8月26日 | 2026年8月27日 | 0.2418ドル |
| 2026年8月19日 | 2026年8月20日 | 0.2497ドル |
| 2026年8月12日 | 2026年8月13日 | 0.2492ドル |
| 2026年8月5日 | 2026年8月6日 | 0.2354ドル |
※米国株は権利落ち日の前営業日までに保有している必要があります。
運用会社は、現在の分配金は100%が推定元本払戻金(ROC)だとしています。また、30日SEC利回り(経費を引いた後の、配当などの実際の運用収益をもとにした利回り)は-0.22%(2026年9月30日時点)とマイナスです。つまり、分配金は株の配当ではほとんどまかなえておらず、オプション収入や保有資産そのものから支払われている形です。なお、最終的な分配金の内訳は年度末に確定します。
設定来の実績(株価と分配金の推移)
設定から2年以上がたち、AIPIの実際の値動きが見えてきました。月末の終値と、1か月あたりの分配金の水準をまとめると次のとおりです。
| 時点 | 株価(終値) |
|---|---|
| 2024年6月4日(設定日) | 50.67ドル |
| 2024年12月末 | 49.00ドル |
| 2025年6月末 | 43.33ドル |
| 2025年10月末 | 43.75ドル |
| 2025年12月末 | 40.05ドル |
| 2026年3月末 | 33.64ドル |
| 2026年6月末 | 37.18ドル |
| 2026年10月23日 | 35.22ドル |
| 期間 | 分配金の水準 |
|---|---|
| 2024年7月〜12月 | 月1.46〜1.51ドル |
| 2025年(年間合計15.16ドル) | 月1.10〜1.45ドル |
| 2026年1月〜4月 | 月1.02〜1.16ドル |
| 2026年5月末〜(毎週) | 週0.23〜0.26ドル(月あたり約1.0〜1.2ドル) |
株価は設定時から約30%下落し、2025年10月末(約43.8ドル)からの1年でも約19%下がっています。分配金の水準も、2024年の月1.5ドル前後から、いまは月1.1ドル前後と約30%減りました。分配利回りが高いままなのは、株価と分配金がそろって下がっているためです。元本の目減りと分配金の減少は、実際に起きています。
ただし、分配金を含めたトータルリターンでは、運用会社の公表値で直近1年+19.02%(NAVベース、2026年6月30日時点)とプラスです。同じ期間のS&P500(+22.32%)には届いていませんが、受け取った分配金まで含めれば資産は増えていた計算です。「株価が下がった=損をした」とは限らない一方で、分配金を使ってしまうと手元の元本は減っていく、という点は理解しておきましょう。
AIPIの経費率
AIPIの経費率は0.65%です。JEPI(0.35%)と比べると高めですが、個別株のオプション取引を行うアクティブ運用型ETFとしては標準的な水準です。同じREX SharesのFEPIも0.65%です。
投資対象とポートフォリオ
AIPIが投資する主な銘柄
AIPIは89銘柄に投資していますが、上位10銘柄で約56%を占めており、JEPIなどに比べると特定の銘柄への集中度が高めです。半導体(エヌビディア、TSMC、マーベル)、データ分析・AIソフトウェア(パランティア、サービスナウ、セールスフォース)、クラウド(アマゾン、マイクロソフト)など、AI関連の企業が中心です。
| 順位 | 銘柄 | 比率 |
|---|---|---|
| 1 | パランティア・テクノロジーズ(PLTR) | 10.82% |
| 2 | エヌビディア(NVDA) | 9.81% |
| 3 | 台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSM) | 7.73% |
| 4 | マーベル・テクノロジー(MRVL) | 7.16% |
| 5 | シーゲイト・テクノロジー(STX) | 3.59% |
| 6 | サービスナウ(NOW) | 3.54% |
| 7 | IBM(IBM) | 3.46% |
| 8 | アマゾン・ドット・コム(AMZN) | 3.32% |
| 9 | セールスフォース(CRM) | 3.29% |
| 10 | マイクロソフト(MSFT) | 3.27% |
※2026年10月20日時点。上位10銘柄の合計は約56%です。指数は毎月リバランスされ、四半期ごとに銘柄の入れ替えも行われるため、上位銘柄は変わることがあります。
コールオプション取引の活用
AIPIは純資産の80%以上をBITA AI Leaders Select Indexの構成銘柄に投資し、そのうえで保有する個別株のコールオプションを売っています。FLEXオプション(条件を自由に決められる取引所オプション)を使うこともあります。このオプション売りで得たプレミアムが、高い分配金の主な原資です。
AIPIのメリット3選
- 分配利回りが圧倒的に高い:運用会社公表の分配利回りは約35%で、JEPI(約8%)やQYLD(約12%)を大きく上回ります。2026年5月からは毎週分配になり、こまめに現金収入が入ってきます。
- AI関連の有力企業にまとめて投資できる:エヌビディアやTSMC、パランティアなどAIを支える企業に1本で分散投資できます。個別株を1つずつ選ぶより、1社の失敗の影響を小さくできます。
- 下落時にオプション収入がクッションになる:値動きが大きい相場ほどオプションのプレミアムは高くなりやすく、受け取った分配金が株価下落の一部を埋めてくれます。分配金込みでは直近1年+19.02%(2026年6月末時点、NAVベース)とプラスを保っています。
AIPIのデメリット3選
- 元本(株価)が目減りしている:分配金は推定100%が元本払戻金で、株価は設定時の50.67ドルから35.22ドルへ約30%下がりました。分配金を使い続けると、手元に残る元本は少しずつ減っていく可能性が高いです。
- 分配金は一定ではなく、減ってきている:分配金の水準は2024年の月1.5ドル前後から、現在は月1.1ドル前後と約30%減りました。オプションのプレミアムは相場の変動の大きさで変わるため、今後も増えたり減ったりします。「年35%」がずっと続くとは考えないほうがよいでしょう。
- 上昇相場で置いていかれ、税金・為替の負担もある:コールオプションを売っているため、AI関連株が大きく上がった時の値上がり益は一部しか受け取れません。さらに新NISAが使えないため、分配のたびに米国10%・国内20.315%の税金がかかります。米ドル建てなので、円高になると円換算の価値も下がります。
AIPIと似たETFとの違い
同じ「オプションで高い分配金を出すETF」でも、投資対象やオプションの使い方で利回りやリスクは大きく変わります。当ブログで解説している主なETFと比べると、次のとおりです。
※分配利回りは2026年10月23日時点の直近12か月の実績。
AIPIは、同じREX SharesのFEPI(大型テック株)やCEPI(暗号資産関連株)の「AI版」といえる位置づけです。利回りが高いものほど、元本の目減りや分配金の変動も大きくなりやすい点は共通しています。値動きの穏やかさを重視するならJEPIやQYLDのほうが候補になります。
AIPIはどんな人に向いている?
向いている人
- 毎週・毎月の現金収入(インカム)をできるだけ多く受け取りたい人
- AI関連株に投資したいが、値上がり益の一部を分配金に替えてもよいと考える人
- 元本の目減りを理解したうえで、高配当枠の一部として特定口座で持ちたい人
向いていない人
- 20〜30年かけて資産を最大限増やしたい人
- 新NISAの非課税メリットを最大限に活かしたい人
- 株価の下落や分配金の減少を見ると不安になる人
まとめ
AIPIを分配金で毎月1株買うには何株必要?
AIPIの株価は約35.2ドルで、直近8回の分配金は1回あたり平均約0.249ドルです。年52回として月あたりに直すと約1.08ドルになります。米国10%・国内20.315%の税金を引くと、1株あたりの手取りは月に約0.77ドルです。
35.2ドル ÷ 0.77ドル = 約46株。つまり、約46株あれば毎月の分配金で1株ずつ買い増せる計算です(外国税額控除は考慮していません)。ただし、分配金が減ったり株価が動いたりすれば必要な株数は変わります。
月1万円の分配金を得るには何株必要?
1ドル=150円で計算すると、月1万円は約67ドルです。手取り0.77ドル/株で割ると約87株、金額にして約3,060ドル(約46万円)が目安になります。利回りが高いぶん少ない金額で届きますが、この分配金の多くは元本の払い戻しであり、分配金の水準自体もこの2年で約30%下がっています。あくまで「今の分配金が続いた場合」の目安として考えてください。
最後に
AI関連株×カバードコール戦略のETF「AIPI」の特徴や分配金、新NISAでの扱い、メリット・デメリットを2026年10月時点の最新データで解説しました。
年35%前後という分配利回りは大きな魅力ですが、設定から2年あまりで株価は約30%、分配金の水準も約30%下がりました。分配金込みのトータルではプラスを保っているものの、高利回りの裏で元本が少しずつ取り崩されている点は、購入前に必ず理解しておきたいところです。
AI関連株の成長に乗りながら、毎週の現金収入を受け取れる仕組みに魅力を感じる人にとっては、ポートフォリオの一部として検討する価値のあるETFだと私は思います。
※本記事のデータは2026年10月23日時点のものです(出典:REX Shares、stockanalysis.com、Yahoo Financeほか)。投資の判断はご自身の責任で行ってください。


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