YSPYとは何か?
YSPY(GraniteShares YieldBOOST SPY ETF)は、アメリカの資産運用会社であるGraniteShares社が2025年2月26日に設定した革新的なETF(上場投資信託)です。このETFは、S&P500指数に連動する3倍レバレッジETF「SPXL」(Direxion Daily S&P500® Bull 3X Shares)に対してプットオプションを売却することで、週次での高配当収入を生み出すという独自の戦略を採用しています。従来のカバードコール戦略とは異なるアプローチで、投資家に新たな収入機会を提供する注目の金融商品です。
YSPYが提供する投資機会とは?
YSPYは、プットオプション売却という戦略を通じて、年間配当利回り30%から50%程度という非常に高い配当収入を目指しています。週次での分配金支払いにより、定期的なキャッシュフローを求める投資家にとって魅力的な選択肢となっています。主な投資目的は、第一に週次での配当収入の獲得、第二にS&P500指数の3倍レバレッジETFであるSPXLへのエクスポージャー(価格変動への間接的な投資)を得ることです。
新NISAには使えるのか?
YSPYは米国上場のETFであるため、日本の証券会社を通じて購入することが可能です。ただし、新NISAの対象となるかは慎重な確認が必要です。一般的に、デリバティブ(オプション)を活用したETFや高レバレッジ型のETFは、新NISA制度の「つみたて投資枠」では対象外となることが多く、「成長投資枠」でも制限される可能性があります。YSPYは2025年2月設定の新しいETFであるため、各証券会社での取扱状況や新NISA適格性については、投資前に必ず証券会社に確認することをお勧めします。また、米国ETFの配当金については米国で10%の源泉徴収が行われ、新NISAで保有する場合は外国税額控除を受けられない点にも注意が必要です。
YSPYの詳細情報
YSPYの基本情報
- 銘柄コード:YSPY
- 正式名称:GraniteShares YieldBOOST SPY ETF
- 運用会社:GraniteShares(グラナイトシェアーズ)
- 設定日:2025年2月26日
- 純資産総額:約2000万ドル(設定間もないため小規模)
- 上場取引所:NASDAQ(ナスダック)
YSPYの配当利回り・分配頻度
YSPYの最大の特徴は、その驚異的な配当利回りにあります。データソースによって異なりますが、年間配当利回りは約30%から50%程度と報告されています。これは、S&P500指数の通常の配当利回り(約1.5%程度)と比較すると、20倍以上という極めて高い水準です。
分配金は週次(毎週)で支払われ、1回あたりの分配金は約0.19ドル前後で推移しています。週次分配により、投資家は頻繁にキャッシュフローを得ることができますが、この高い配当利回りは、後述するオプション戦略とレバレッジに伴うリスクの対価でもあることを理解する必要があります。
YSPYの経費率
YSPYの経費率は1.15%となっており、一般的なインデックス型ETF(0.03%〜0.20%程度)と比較すると非常に高い水準です。これは、アクティブ運用でオプション戦略を実行するための運用コストが含まれているためです。年間1.15%の経費率は、100万円投資した場合、年間1万1500円のコストがかかることを意味します。高い配当利回りとともに、このコストも投資判断の重要な要素として考慮する必要があります。
YSPYの投資戦略:プットオプション売却とは?
YSPYの投資戦略は、従来の配当型ETFとは大きく異なります。一般的な高配当ETFは、配当を支払う企業の株式を保有することで配当収入を得ますが、YSPYはデリバティブ(金融派生商品)であるオプション取引を活用して収入を生み出します。
プットオプション売却戦略の仕組み
YSPYは、S&P500指数の3倍レバレッジETFである「SPXL」(Direxion Daily S&P500® Bull 3X Shares)に対してプットオプションを売却します。プットオプション売却とは、「特定の価格(行使価格)で資産を売る権利」を他の投資家に販売し、その対価として「プレミアム(オプション料)」を受け取る取引です。
具体的には、アウト・オブ・ザ・マネー(現在価格より低い行使価格)のプットオプションを売却することで、SPXLの価格が大幅に下落しない限り、プレミアム収入を安定的に得ることができます。このプレミアム収入が、YSPYの週次配当の原資となっています。
カバードコール戦略との違い
従来の配当型ETFでは、「カバードコール戦略」が一般的です。これは保有株式に対してコールオプション(買う権利)を売却する戦略ですが、YSPYはプットオプション(売る権利)を売却する点が大きく異なります。この戦略により、市場のボラティリティ(価格変動)が高い時期には、より多くのプレミアム収入を得られる可能性があります。
3倍レバレッジの影響
YSPYが対象とするSPXLは、S&P500指数の日次リターンの3倍を目指すレバレッジETFです。つまり、S&P500が1%上昇すれば3%上昇を目指し、逆に1%下落すれば3%下落します。このレバレッジ効果により、オプションプレミアムも高くなる傾向がありますが、同時に価格変動リスクも3倍に増幅されます。
YSPYのメリットとデメリット
メリット
- 極めて高い配当利回り:年間30%〜50%という驚異的な配当利回りにより、大きなインカムゲイン(配当収入)を期待できる
- 週次での分配金:毎週配当を受け取れるため、定期的なキャッシュフローを確保でき、資金繰りがしやすい
- S&P500へのエクスポージャー:世界最大の株式市場であるS&P500指数への間接的な投資機会を得られる
- 革新的な投資戦略:プットオプション売却という差別化された戦略により、市場のボラティリティを収益化できる
- 下落局面での一定の保護:プットオプション売却により得たプレミアムが、ある程度の下落を吸収する効果がある
デメリット
- 極めて高いリスク:3倍レバレッジETFを対象とするため、価格変動リスクが通常のETFの3倍になる。急激な市場下落時には大きな損失を被る可能性がある
- 高い経費率:1.15%という経費率は、長期保有において大きなコスト負担となる。10年間で元本の約11%が経費として消費される
- 上昇局面での利益制限:オプション戦略により、市場が大きく上昇した場合の利益が制限される(キャップされる)可能性がある
- レバレッジの複利効果による価値減少:SPXLは日次リターンの3倍を目指すため、市場が横ばいや上下を繰り返す場合、時間の経過とともに価値が減少する「ベータ・スリッページ」というリスクがある
- 純資産総額の小ささ:設定間もないため純資産総額が約2000万ドルと小規模で、流動性リスクや運用継続リスクがある
- 複雑な仕組み:オプション取引やレバレッジETFの理解が必要で、投資初心者には不向き
- 新NISA対象外の可能性:デリバティブやレバレッジを活用するため、新NISA制度の対象外となる可能性が高い
- 為替リスク:米ドル建てのETFであるため、円高局面では為替差損が発生する可能性がある
YSPYに向いている投資家・向いていない投資家
YSPYに向いている投資家
- 高いリスクを理解し、許容できる投資経験者
- 週次での定期的な配当収入を重視する投資家
- オプション取引やレバレッジETFの仕組みを理解している投資家
- 市場のボラティリティを収益化する戦略に興味がある投資家
- 短期〜中期での投資を考えている投資家
- ポートフォリオの一部として、少額を実験的に投資したい投資家
YSPYに向いていない投資家
- 投資初心者や、リスクを避けたい保守的な投資家
- 長期的な資産形成を目指す投資家(高い経費率が長期リターンを圧迫)
- 元本保全を重視する投資家
- デリバティブやレバレッジの仕組みを理解していない投資家
- 新NISA枠を活用したい投資家
- 安定したキャピタルゲイン(値上がり益)を重視する投資家
他の高配当ETFとの比較
YSPYを他の人気高配当ETFと比較してみましょう:
| 項目 | YSPY | SCHD | VYM | JEPI |
|---|---|---|---|---|
| 配当利回り | 30-50% | 約3.5% | 約2.8% | 約7-8% |
| 経費率 | 1.15% | 0.06% | 0.06% | 0.35% |
| 投資戦略 | プットオプション売却 | 高配当株投資 | 高配当株投資 | カバードコール |
| 分配頻度 | 週次 | 四半期 | 四半期 | 月次 |
| リスク水準 | 非常に高い | 中程度 | 中程度 | 中程度 |
この比較から、YSPYは配当利回りでは圧倒的に高いものの、経費率とリスクも極めて高いことが分かります。SCHDやVYMのような伝統的な高配当ETFは、安定性を重視する長期投資家に適していますが、YSPYは高リスク・高リターンを求める投資家向けの商品です。
まとめ
YSPYの週次配当で月1万円の収入を得るには?
YSPYの株価は約20ドル前後で推移しており、週次の分配金が約0.19ドルです。月1万円(約100ドル)の配当収入を得るためには、週あたり約25ドルの配当が必要となります。1株あたり週0.19ドルの配当なので、約130株〜140株を保有すれば、月1万円程度の配当収入が見込めます。投資額としては、約2,600ドル〜2,800ドル(1ドル=150円換算で約39万円〜42万円)が必要になります。
ただし、この試算は現在の配当水準が維持されることを前提としており、市場環境の変化により配当額は大きく変動する可能性があることに注意が必要です。
最後に
米国のETF「YSPY」の特徴や投資のメリット・デメリット、その独自の投資戦略について詳しく解説しました。
このETFは、革新的なプットオプション売却戦略により、週次で配当を支払い、年間30%〜50%という驚異的な配当利回りを目指す、非常にユニークな金融商品です。S&P500指数の3倍レバレッジETFであるSPXLに対するオプション戦略により、市場のボラティリティを収益化するという新しいアプローチを採用しています。
しかし、その高い配当利回りの裏には、極めて高いリスクが存在します。3倍レバレッジによる価格変動リスク、1.15%という高い経費率、上昇局面での利益制限、そして設定間もないことによる流動性リスクなど、多くのリスク要因を理解した上で投資判断を行う必要があります。
YSPYは、伝統的な長期投資向けのETFではなく、むしろ高リスクを理解し許容できる経験豊富な投資家が、ポートフォリオの一部として、戦術的に活用する商品と言えるでしょう。投資初心者や、安定した資産形成を目指す投資家は、まずSCHDやVYMのような伝統的な高配当ETFから始めることをお勧めします。
投資を検討される際は、必ず最新の運用状況を確認し、ご自身のリスク許容度と投資目的に合致するかを慎重に判断してください。

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